“しゃべり”に近い規準喃語

さらに4~6か月になると、口のなかの空間はいっそう広がり、声を響かせるだけでなく、舌もさまざまに動かせるようになります。こうなると、赤ちゃんは、実にさまざまな音を出すようになります。

その様子は、まるで自分の声で遊んでいるようなので、この時期は「声遊びの時期」とも呼ばれます。そしてゼロ歳後半ともなれば、「アーアー」とか、「バーバーバー」など、音を繰り返す発声が見られるようになります。

厳密に言えば、「アーアーアー」のような母音の繰り返し音声より、「バーバーバー」「マンマンマン」のような母音と子音が組み合わされた音(音節)の繰り返しの方が高度です。

というのも、母音の繰り返しは、「アー」と言いながら身体を揺すれば出せますが、音節の繰り返し音声(規準喃語)は、唇や舌を動かして音を区切らなければならないからです。

私たちは言語を話すとき、ものすごい速さで違う音をつなげてしゃべっています。そのような“しゃべり”にいちばん近いのも、この規準喃語なのです。

『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』 (著:針生悦子/中公新書ラクレ)