だらしなく見えないのが不思議

大人になってフランスに来て、その洗濯の本当の意味がわかったような気がした。簡単に言うと、アイロンをかけないのだ。

『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』(著:中島たい子/幻冬舎文庫)

実際アイロンを貸してもらったら、あまり使っていないようで、スチームボタンを押したら石灰の固まり(水にそれが含まれている)が、ブシュッと飛び出してきた。もちろんフランス人がアイロンをかけない、ということではなく、これは叔母だけのこととして話した方がいいと思うけれど。

でもアイロンをかけている様子がないのに、叔母の服や家のものを見ても、シワシワだなぁと感じることはない。一つ思ったのは、しっかりした生地であれば、バンバン叩いたり引っ張ったりするだけで、アイロンをかけなくてもすんでしまうのではないだろうか、ということだ。

今回の旅行で布団カバーを叔母からゆずってもらったのだが、それも厚手のすごくしっかりした木綿生地で、アイロンをかけなくても、のばして干して、畳んでおくだけでピンとなる。

叔母の普段のファッションもカジュアルで、男性っぽいパンツスタイルが多いから、アイロンをかける必要があるものはあまり着ないのだろう。とはいえTシャツなんかはけっこう薄手のよれっとしているものも着ている。なのに、だらしなく見えないから不思議ではある。

さらに大胆さでは母親に勝るソフィーの家でも、私はびっくりすることになる。

「ソフィーは、シワものばさない……」

これでいいの? と乾燥ワカメのようになっている洗濯物を見て思った。ほぼランドリーから出したままの形で干してある。

物干にポンとかけただけの洗濯物を見て、私は一時期流行ったアメリカのドラマ『セックス・アンド・ザ・シティー』のワンシーンを思い出した。

主人公のキャリーが、携帯電話を肩にはさんで友人と話しながら、バスルームでブラジャーを手洗いしているシーンなのだが、水がしたたるような状態で形もととのえず、洗濯紐にポンとひっかけて、終わりなのだ。

ドラマなので演出も入っていると思うが、水を絞ろうが絞るまいが、欧米ではそんな干し方でいいらしい。