厳しさとパワハラの根本的な違い

たとえば、相手に乱暴なことをしようとすれば、相手の心は必ず抵抗します。ひとたび相手の心を抵抗させてしまうと、投げるのは至難の業です。自分より力が強い相手や体の大きな相手を投げることなど、到底できません。

『活の入れ方』(著:工藤公康・九重龍二・藤平信一/幻冬舎)

相手の心を抵抗させないためにはどうするか? それにはまず、相手の心の状態をよく知ることです。つまり、相手のことを理解することです。

理解できなくても、理解しようと努めることです。こうして、相手の心を尊重し、相手の心の向く先に導くからこそ、投げることができるのです。

無理やり、力ずくで投げているわけではありません。相手が行きたい方向を尊重し、相手を導いているわけです。

この後、話に出てくる工藤公康さんや九重親方(元大関・千代大海)の師匠がやっていたことも、これと同じです。厳しい鍛錬をしていますが、無理やりやっているわけではありません。

師匠は厳しい環境をつくり、その中で本人が主体的に自分を追い込んでいく。

これが「人が育つ厳しさ」なのです。上司の都合を押し付ける「パワハラ的な厳しさ」とはまるで違うことがおわかりいただけるでしょう。