大阪大学名誉教授の佐藤先生が介護中の家族からよく質問されることとは?(写真提供:Photo AC)

平均寿命が延びる中で認知症患者も増え、厚生労働省の発表によると、2025年には65歳以上の5人に1人に達するとの推計もあります。認知症の症状は人それぞれ異なるため、介護者側とのコミュニケーションが上手くいかず、お互いにストレスを抱えてしまう場合も多くみられます。大阪大学名誉教授の佐藤眞一先生いわく「認知症の人の発言や行動は、その言動をする理由を知れば、介護はラクになる」とのこと。今回は、佐藤先生が介護中の家族からよく質問される内容と回答をご紹介します。

認知症の親にイライラしてしまう

Q. これまで当たり前にできていたことができなくなる親を見ていると、イライラしてしまう自分がいます。親子なのに、認知症だとわかっているのに、イライラしてしまうのは親不孝でしょうか。

A. 認知症になった親を見ていると、「昔はもっとしっかりしていたのに」、「こんな言葉は言わなかったのに」など、若くてしっかりしていて、子どものことを真剣に考えてくれた頃を思い出してしまうものです。

楽しく、和気あいあいと暮らしていた頃のよい思い出と、認知症になってすっかり変わってしまった今の親の言動を比べてイライラしてしまうのは、実の子どもだからこそのことなのでしょう。

イライラしてしまうのは、親なのだからと懸命に介護しようとすればするほど、理想とはかけ離れたことしかできない自分に向かっている感情でもあります。

どうしてもイライラを抑えることができないときは、いったんその場から離れて、興奮している自分の感情を落ち着かせて、「認知症なのだから、わからないことや、できないことがある」ということを改めて思い起こすことが大事です。