節税効果が高い

実例を見てみましょう。

Dさんは多額の資産があり、このままでは相続の際、一人娘のEさんに重い相続税が課せられることを知らされ、タワマンの上層階を購入しました。

45階建ての40階、90平方メートル(約27坪)の住戸です。Dさんが住む予定はありませんから、目的は資産防衛です。

この住戸の登記簿(とうきぼ)を見ると、土地の持分(もちぶん)は4坪、建物は共用部分の持分を含めて36坪です。

タワマンの価格は1億3500万円、その内訳は売買契約書によると土地1億円、建物3500万円です。専有面積換算で坪単価500万円です。

5年後、Dさんは亡くなり、Eさんが相続することになりました。さて、この住戸はいくらで評価されたでしょうか。

タワマンにおいて高層部に人気が集中するのは眺望の良さはともかく、節税効果が高いことも理由の1つなのです(写真提供:Photo AC)

このマンションの建つ土地の路線価は坪単価400万円。対して、購入価格に占める土地代は、坪あたりに換算すると2500万円(1億円÷4坪)になります。

つまり相続額は、坪あたり2100万円分が圧縮されています。

建物については固定資産税評価額ベースでの評価となり、築年数によって減価していきますが、相続時評価額は約7割、約2450万円となります。

この住戸は4050万円で評価されたわけです。実に、9450万円の圧縮です。

さらに、Dさんはマンション購入時、銀行に勧められて自己資金を2000万円だけにして、残り1億1500万円をローンにしていました。

相続財産を算出する際は、借入金額分を評価額から控除できます。土地建物は4050万円の評価でした。

ここからローン残高を差し引けば、実質評価額はマイナスになります。

Dさんは他に預貯金や有価証券も保有していましたが、結果的に娘のEさんは相続税の支払いを大幅に減らすことができました。

このようにマンション、とりわけタワマンの節税効果が高いのは、土地の容積率が高く、戸あたりの土地の持分が少ないため、路線価評価額との乖離(かいり)が大きくなりやすいからです。

また、高層部ほど販売価格が高いため、同じ住戸面積でも高層部ほど土地代の割合が高く設定でき、圧縮効果が高まります。

タワマンにおいて高層部に人気が集中するのは眺望の良さはともかく、節税効果が高いことも理由の1つなのです。