思惑
しかしこの対策方法については、税負担の公平性を著(いちじる)しく欠くとの理由で、国税庁は2024年1月以降の相続についてはタワマンに限らず、マンションの相続評価額で実勢価格との乖離が大きいものについては一定基準のもと、実勢価格の6割程度とすることを決めました。
それでも、相続の際に資産を現金だけで持っているケースに比べて、不動産は評価額を低めに設定していることに変わりはありません。
このような「特権」を利用できる超高額マンションは、相続を間近(まぢか)に控えた高齢富裕層にとって、魅力的な資産なのです。
実際、タワマン購入者において、高齢富裕層は一定の割合を常に示していると言われます。
相続の際に資産圧縮を行なって、子供や孫に資産を承継する。また超高額マンションなら資産価値も落ちにくい、インフレになればさらに価値が上がるかもしれない。
こんな思惑も相俟(あいま)って、需要が落ちず、マンション価格は高騰し続けているのです。
※本稿は、『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。
『なぜマンションは高騰しているのか』(著:牧野知弘/祥伝社新書)
マンション価格の高騰が止まらない。
かつて「億ション」、すなわち1戸=1億円以上のマンションが騒がれたことが噓のように、今や「2億ション」「3億ション」でないと、不動産業界では超高額マンションと呼ばない。
東京だけではない、大阪でも25億円の物件が登場した。いったい誰が買っているのか? 驚愕の価格の背景には何があるのか? 日本社会はどう変わっていくのか? 業界に精通した著者が読み解いていく。