継ぐ人のない物品はゴミになる
大きな一戸建てを片付けた時のことです。文枝さんも現場に行きました。空き家の多い住宅街に、老夫婦が2人で住んでいました。子どもは県外在住で、親の死後も、県内には戻らないそうです。
貴重品だけを持ち出した子どもに、「あとはお任せします」と言われました。アルバムなど思い出の品もありましたが、すべてが「ゴミ」になりました。見ていて悲しくなりました。仕事だと割り切って処分しました。
先日は、3LDKのマンションを整理しました。「すべてお任せ」との発注で、県外在住の子どもは片付けに立ち会いませんでした。部屋には、老夫婦の生活の痕跡がそのまま残っていました。夫の位牌がある部屋で、老妻は布団で亡くなったそうです。
すごく大量の布団や、花器や食器など、家財道具もたくさんありました。もしかしたら子どもたちが帰ってきた時のために取ってあったのかもしれません。目利きならば遺品を選り分けられたかもしれません。でも、興味のない者には価値は分かりません。全部、ゴミとして捨てるしかありませんでした。
そんな現場を見るにつけ、我が身を振り返ってしまいます。「子どもがいる人は、子どもに引き継ぐんでしょうけど、私みたいに独り身だと、自分で処分しなくちゃいけないなあ、と……」。継ぐ人のない物品はゴミになります。
文枝さんは遺品整理に立ち会うたび、自分も、持ち物を減らさなくてはと痛感しています。買うだけ買って袖も通していない服や、箱に入ったままの贈答品のタオルなど、使えそうな新品は、仕事で知り合った海外からの技能実習生にあげています。「使ってくれる人がいるだけありがたいです」
そもそもは、つい「大人買い」してしまう習性を改めないといけないんですけれど、と文枝さんは苦笑します。かわいい服が好きで、ブティックで目にすると、「かわいい~」と、つい買ってしまいます。
しかも色違いで気に入ると、別色も「大人買い」。そのうえ買ったら満足してしまい、ほとんどはそのまま「タンスの肥やし」になっています。おかげで自室として使っている2階の3部屋すべて、荷物でぱんぱんです。「汚部屋です。捨てればいいのに、モノが多いんですよね~」。モノであふれている母のことを笑えません。