姉の罵声と泣き落とし電話に……

それでも引き下がろうとしない姉に苛立ちを覚えたアオイさんは、勢い余ってこう告げた。「姉さんが息子と一緒に住んでいる父さんの家を私にくれるなら、ちょっと考えてもいい」と。

「すると姉は、『お父さんがローンを完済した家賃タダの家を奪われたら、私たち、どうやって生きていけばいいのよ!』と怒鳴り散らしたんです。『父さんに頼らずに、自分の力で生きなさいよ』という言葉が出かかったけれど、それ以上関わるのも面倒で、一方的に電話を切りました」

しかし、そのあとが大変だった。姉は日に10本以上、昼夜かまわずアオイさんの携帯電話に連絡をしてきた。出ないでいると、留守番電話に「自分勝手な娘!」「バカ野郎!」という罵声と、「お願い……私たちを助けて」「あなた、優しい子だったじゃない」という泣き落としのメッセージが交互に残っている。そんな日々が半年も続いたという。

「耐え切れなくなって、私は姉に手紙を書きました。『これから毎月、お金を送ります。そのかわり今後一切、お父さんの面倒はみないことを許してください。母に何かあったら、姉さんには迷惑をかけることなく、私が全面的に世話をしますから』と。2万円の現金とともに……」

手紙が功を奏し、姉からの電話は減ったものの、時折「お父の容体が悪化して、本格的に介護が必要になったら、絶対に助けてよね」という念押しの連絡がくる。きっぱり断っているが、押しに弱いアオイさん。甥っ子に「お母さんとおじいちゃんを助けに来て!」と泣きつかれたら、拒絶する自信がないと苦笑する。

「自分の中にあの人の血が半分流れていると思うと鳥肌が立つほど大嫌いな父。介護なんてしたら、嫌悪感が爆発し、殺してしまいかねない。父親がこれ以上悪くならずにぽっくり逝ってくれることを祈るばかりです」

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実は私にも、苦手に感じている母親がいる。もしこの先母の身に何かあれば妹に任せ、一切手を貸さないつもりでいた。3人の方のエピソードからは、「家族」というしがらみと、そこから生まれる戸惑い、諦めが強く感じられた。私の「母の面倒をみたくない」という思いは叶えることができるのだろうか。

 


ルポ・しがらみから逃れられず、嫌いな親を看る羽目に
【1】弟を溺愛し続けた母が寝たきりに。20年ぶりに顔を合わせて
【2】「施設はかわいそう」。突然義母を引き取った夫の無責任
【3】鳥肌が立つほど嫌いな父が脳梗塞に。姉からSOSが来たが