問いかけの曖昧さ

では答え合わせをしましょう。(1)リンゴ、(2)ヒツジ、でしたか?

「それ以外に何を答えるというのか、それしかないだろう」と思った方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、「これは?」という曖昧な問いかけ自体に、戸惑われた方もいらっしゃるかもしれません。

それでも、ふだんの生活のなかで、私たちがこういうモノを目にして何と言うかはまったくの自由、ということを考えれば、この問いかけの曖昧さは、それこそふだんの私たちが置かれている状況そのものだと言えます。

こういう曖昧な、何を答えてもいいとされる状況で言うとすれば、それはやはり「リンゴ」とか「ヒツジ」になるのではないでしょうか。

ここで確かめたかったのは、たとえば、リンゴの写真を見せながら「これは?」と尋ねられて、「マルイ」とか、「クダモノ」と答えることはあまりないのではないか、ということです。「ヘタ」と言うこともないでしょう。

(2)の場合もやはり、真っ先に「フワフワシテイル」とか、「ドウブツ」、あるいは「メリノ」と答えたという人も、あまりいなそうです。

『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』 (著:針生悦子/中公新書ラクレ)