モノの名前
このように、何かモノを目の前にしたとき、私たちが口にしやすい単語は、実はある特定のタイプに偏っています。
それはつまりモノの名前です。「マルイ」とか「フワフワシテイル」といった、その対象の性質でもなければ、「ヘタ」などの部分の名称でもなく、その対象全体を表すモノの名前です。
また、モノの名前はモノの名前でも、リンゴに対して「クダモノ」とか、羊に対して「ドウブツ」とか「メリノ」とは、あまり言いません。
「クダモノ」や「ドウブツ」は、上位カテゴリーの名前です。つまり、「クダモノ」には、リンゴだけでなく、バナナもぶどうもパイナップルも含まれます。その結果、「クダモノ」と呼ばれるモノの共通点は、「リンゴ」と呼ばれるモノの共通点より少なくなります。
また、見た目の類似性という点でも、「リンゴ」は、フジもコウギョクもゴールデンデリシャスもそっくりな形をしていますが、クダモノどうしとなると、そういうわけにはいきません。
「メリノ」は、「ヒツジ」の下位カテゴリーの名前です。羊のなかの特定の種類が、メリノなのです。ほかに羊には、チェビオットやサウスダウンといった種類もありますが、結局どれも羊だし、お互いによく似ています。特に種類にこだわる場面でなければ、全部「ヒツジ」でいい、と考えるのは私だけではないと思います。