「聞いたことはあります。宗教法人というのは、税金がかからないし、税金逃れに使おうとする動きがあるとか……」
「なるほどなあ……」
 永神が説明を続けた。
「世の中には休眠宗教法人ってのがあるらしい。つまり、実際には活動していない法人だ。そして、一方では何とか税金を減らしたいと考えるやつや、もっとタチの悪いやつらもいる」
「タチが悪いって、おまえが言うなよ」
「だから、俺は真面目なビジネスマンだよ。タチが悪いやつらってのは、マネーロンダリングを目論んでいるようなやつらだ」
「それで……?」
「その両者を仲介するやつがいるわけだ」
「仲介……」
「宗教法人ブローカーって呼ばれている連中だね。片や活動していない宗教法人を持っていてそれを金に換えたいと思っているやつがいる。片や税金対策やマネロンを考えているやつらがいる。その間を取り持つわけだ」
「そいつは違法じゃないのか?」
「法には触れない。不動産じゃないんで宅建の資格もいらない」
「だが、街中で仲介業をやるわけにもいくめえ。実際にはどうやって商売するんだ?」
「ネットだよ」
「ふうん」
 阿岐本は考え込んだ。「それで、どこかのブローカーが駒吉神社を売りに出しているってことなのか?」
「具体的にそういう話を聞いたわけじゃない」
「噂だと言ったな? どういう噂だ?」
「駒吉神社が、多嘉原会長と縁を切っただろう」
「ああ、それが何か関係あるのか?」
「駒吉神社と多嘉原会長は長い付き合いだった。その付き合いがある間は、誰もちょっかいは出せない。けど、多嘉原会長という重しがなくなったら……」
「なるほど……」
 阿岐本は思案顔で言った。「駒吉神社は火の車だと言ったな? 足元を見て買い叩こうというやつがいても不思議はねえ……」
「あの……」
 日村は言った。「すいません。いいですか?」