イメージ(写真提供:photo AC)
文化庁の生活文化調査研究事業(茶道)の報告書によると、茶道を行っている人が減少する中、平成8年から28年の20年間で70歳以上の茶道を楽しむ人は増加し続けているという。人生100年時代の到来で、趣味や習い事として茶道に触れる機会が増えていると考えられる。そんな中、68歳にしてお茶を習うことになった、『かもめ食堂』『れんげ荘』などで人気のエッセイスト・群ようこさん。群さんが体験した、古稀の手習いの冷や汗とおもしろさを綴ります。お稽古を見学し、やる気になった群さん。さっそくお稽古の道具の準備を始めることにしましたが――。

足の痛みに効く道具を探す

その日の夜、お風呂に入るときにふと見たら、膝下と足の甲の畳に当たっていた部分が赤くなっていた。私の体重を正座した両足で支えているのだから、こういうことにもなるのだろう。とりあえず入浴中もその部分をさすり、上がってからはオイルでマッサージをしておいた。

これが重なったら足に跡が残るのではと気になり、インターネットで調べてみると、茶道を習っている妻の膝を見たら、変色してあまりにかわいそうだったので、よい膝当てを探してあげようとする優しい夫のブログなどもあった。

赤くなるのが度重なったら、正座のときに体を支えている足の部分が、変色するのは間違いないと納得できた。

 

膝が出るような丈のスカートなどは穿かないので、変色していようがいまいが関係ないのだが、やはり体に対するダメージは少ないほうがいい。次のお稽古まで2週間あるので、まず探したのは、足の痛みを改善してくれるものだった。

インターネットで探すと、膝当てというものがあった。膝をつく作業などに使えるものらしい。コメントを見てみると、茶道のお稽古に使っている人もいた。そうか、こういった物が使えるのかと、早速注文してみたら、ものすごくごっつい厚みのあるものが届いた。

そのカーブがついたものは、膝の上にうまいこと、かぽっと収まり、上下は十センチほどの幅広のゴムでずれないようになっている。試しにそれをつけて床に膝をつくと、まったく痛くはないのだが、あまりにごつくて、これを着物や洋服の下に装着するのはどうなのかと首を傾げた。

他に、もっと薄くて効果があるものはないかと探して注文したら、勘違いをしてバレーボール用の膝当てが届いてしまった。前に買ったのが左右2枚入りだったので、今度もそうだろうと思っていたら、1枚入りだった。

これもまた前にも増して厚みがあるしとても固く、前に買ったものよりひとまわり大きい。指先で叩いてみると、コンコンと固い音がする。あれだけの速さのボールを、転がったり膝をついたりしてレシーブするのだから、これくらいのガードがないと、膝がもたないだろう。

しかし茶道のお稽古に使うにはあまりに固いし、ごつすぎる。顔の前に持ってきたら、防具になりそうなほどで、これを両膝につける勇気はなかった。