「東京―九州往復の飛行機代だけで正規料金ならば7万円。私は航空会社の介護割引やLCC、新幹線も駆使して節約していたのに、次姉に多額のお金が渡っていたというのはショックでした。入院費の13万はのちに返してもらいましたが、このときの帰省で、クレジットカードの支払いは通常月の2.5倍になりました」

母親が完治したら、家に戻って父親と暮らしてほしいと考えていたが、介護休暇を使って2週間帰省してみると母親の様子がおかしい。着替えを嫌がる、家のカギと自転車のカギが見分けられない。検査をしてみると認知症とわかり、医師からの助言で、母親だけ介護付き有料老人ホームに入所させることを決めた。

「私が幸運だったのは、たまたま介護経験者の話を聞く機会があったことです。最初にわっとお金も時間もかかる時期があるといわれて。介護の方針が決まって慣れてくれば、負担も軽くなるはず。そう信じて定期預金を解約しました」

首都圏と比べると施設費用は割安だ。入居一時金は、居室料2万8000円の3ヵ月分で8万4000円。毎月の負担は光熱費や食費、ベッドのレンタル代なども含めて11万円程度。両親の年金で払っていける額だ。逆に地方でより深刻なのはヘルパーなどの人手不足だという。

「現在は私に収入があり、頻繁に帰省する費用も出せます。でも私にも自分の家族があって、子どもはまだ高校生。両親は心配ですが、介護に専念することもできません。父の本格的な介護はこれからですが、頑固なので誰かに任せられるのか……。2人の介護が長引けば貯金がなくなる可能性だってあります」

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皆、ギリギリのところでやりくりしている様子がわかる。介護が長引いて親のお金だけで成り立たなくなったら、子どもが手助けせざるをえない状況にもなるだろう。そのとき、どんな関わり方を選択するのか。介護費用の不安は尽きない。

 


ルポ・「親子共倒れ」が頭をかすめた日

【前編】母の入院で老後資金を使い果たし、働き続けるしかない
【後編】介護うつで離職。兄は「お前に任せる」のひとことのみ