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ひとり旅は何も決めずにふらりと旅する楽しさもあるけれど、目的があれば充実度はさらにアップ。自分だけの《楽しみ》《好き》を思う存分に味わう3人の旅スタイルを紹介します。今回のテーマは「温泉」。ひとり温泉旅行の達人がおススメする旅先は――。(構成=大野麻里)

その日の気分で気ままに過ごす贅沢な時間《温泉》

湯治をしていた祖父の影響もあり、私にとって温泉は身近な存在。20代の頃は、気の合う女友だちと温泉旅行をしていました。ただ、友人が結婚したら気軽に誘うことが難しくなり、別の友人とも行ってみたものの、旅のスタイルが合わず、気を使って疲れてしまって。それならば、とひとりで泊まれる温泉宿を探すことにしたのです。

初めて宿泊したのは、栃木県の日光湯元温泉にある「紫雲荘」という小旅館。せっかくならば運気のいい方角に行こうと、風水を頼りに選んだ場所で(笑)、憧れだった泉質の「にごり湯の硫黄泉」、人目が気にならない「部屋食」という条件で決めました。

ほんのり青みがかった半透明のお湯に浸かり、日光名物の湯葉を使った料理を堪能した私はひとり旅の虜になり、さまざまな温泉地へのひとり旅を計画するようになったのです。

今ではひとりを心から満喫していますが、当初は女性のひとり客は少なく、気恥ずかしさもありました。けれど、おいしいご飯を食べて、地酒を飲んで、温泉に浸かれば、しみじみ「来てよかったな」という気持ちに。15年が経ち、おひとりさまの女性客もずいぶん増えたように感じています。

私は宿で過ごす時間が好きなので、周囲を散歩する程度。観光にはあまり興味がありません。いつも早い時間にチェックインして、混雑しないうちに温泉へ。夕食に舌鼓を打ち、部屋でのんびりした時間を過ごし、そのまま早めに寝てしまうこともあれば、もう1回温泉に入ることも。

翌日は朝食をとり、チェックアウトぎりぎりまで温泉を満喫します。とにかくその日の気分で気ままに過ごすので、ひとりでないと難しい(笑)。誰かと一緒だと「あそこに寄ってから宿に行こう」「早く宿を出て観光しよう」となりがちですから。