福が来てから、娘との関係も大きく変化した(写真提供:著者)
環境省が公開している「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、令和4年度の犬の処分数は、2,434頭だそう。そのようななか、余命半年と宣告された妻と家族のために、殺処分寸前だった保護犬・福を家族として迎え入れた小林孝延さんは、「救われたのは犬ではなく僕ら家族だった」と語ります。小林さんいわく、「福が来てから、娘との関係も大きく変化した」そうで――。

父と娘の関係

福が来てから、娘との関係も大きく変化した。大学への進学を前にした年頃の女子高生だったつむぎは、3つ上の兄ときおとは違って、自分から声をあげて主張したり、積極的に話すことがない、どちらかといえばおとなしい性格の子だった。

ときおは高校の進路を決めるときも、大学のときも、そして将来のビジョンなどあらゆる相談ごとを、すべて本人からもちかけてくれた。

だから僕はそれに応えることで父親としての役割を果たせているように思っていた。

ところがつむぎは、待っているだけでは一切なにも話しかけてはくれない。

それどころか薫(妻)の容態がおもわしくなくなった頃からは、家にいるときはほとんど部屋にこもるようになってしまい、僕とは会話らしい会話がなかった。

ただ、朝、お弁当を作って手渡せば「ありがとう」と素直に言うし、こちらから質問すればちゃんと答えてくれた。

だから、結局それは僕がもう一歩、彼女の心に踏み込んで、関わろうとしなかったことに起因していたのだろう。