教えてくれたのは
気がつけば福が家に来たことで、ぎくしゃくして滑りが悪くなっていた家族の間を仕切っていた扉が、今は滑らかに大きく開き、お互いへの思いやりが風のように心地よく吹き抜けるのを感じた。
過去を悔やんでもしょうがない。
そして未来を案じても今の時間が無駄になるだけ。
過去も未来も実際には存在しない。
存在するのはただ「現在だけ」。
そのことを教えてくれたのはまぎれもなく福だった。
※本稿は、『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(風鳴舎)の一部を再編集したものです。
『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(著:小林孝延/風鳴舎)
余命半年と宣告された妻。絶望しかなかった小林家の一員となった保護犬・福。
人を警戒してなかなか懐かない殺処分寸前だった福がもたらしたのは、“笑顔”と“生きようとする力”。
救われたのは犬ではなく僕ら家族だった――。