チームワーク

しかし、福が来てからというもの、顔を合わせての会話はもとより、離れていてもしょっちゅうLINEでやりとりするようになった。

それどころか、お互いの予定を相互に把握して、日常の世話の役割分担を行い、休日には公園やドッグランに一緒に出かけるようになった。

『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(著:小林孝延/風鳴舎)

正直、福をコントロールするにはつむぎの存在が不可欠で、彼女なしではなにひとつできなかったということでもあるのだが、嫌な顔ひとつせず、かいがいしく福の世話をした。

ある日、ワクチンを接種するために行った動物病院の帰りに、犬も一緒に連れて入れるドッグカフェに立ち寄った。

ローテーブルの前に据えられたソファがどれも色や形が違っていて、どこに座ろうか席選びだけで目移りしてしまうおしゃれな店内だ。

席の半分ほどがうまっていたが犬連れのお客はほとんどいなかった。

娘が小学生のときは、よくふたりででかけて、チョコレートパフェとか、いかにも女の子が好きそうなものを食べさせて点数を稼いだものだが、年頃になってからはこうして一緒にカフェに入ることなんてなかった。

お腹が空いているというので、ナスのトマトソースパスタと、ラテアートがかわいいカフェラテを頼む。

愛犬家が多い店だけあって犬用のメニューもあるのに驚いた。

もっとも福は慣れない環境に怯えているから、きっとどんなに素敵なメニューを目の前にしても口をつけることはないだろうと思い、注文はしなかった。

福が暴れないようにひとりがしっかりと抱っこしてなだめているあいだに、もうひとりが食べる。

ランチを食べるだけでもチームワークが必要だ。でも犬連れでカフェにいると、自分たちが犬を家族に迎えたという実感がじわじわと湧いてくるのがわかった。