インターネットである。集中が切れると、そのたびにニュース読んだり検索したり。音楽は朝から晩までつけっぱなしの掛け流し。おっと温泉用語だ。温泉に行きたしと思へども、温泉はあまりに遠くて暇もなし。

そして夜になると人の声が恋しくなるのか、映画やドラマをつける。これで集中しろっていう方がおかしいって? 前からこうだったんです。手段が今はストリームで、前はCDやDVDだっただけだ。

検索する癖も前からだった。見たもの聞いたもの何もかも検索する。さっきは「あかもく」と「めかぶ」の違いを検索していた。その前は「コンビニスイーツ」について検索していた。その前は「シネラリア」。この植物、何科の何属で、名前の意味は何で、なぜ昔はシネラリアだったが今はサイネリアと呼ぶのか、なんてことも検索していた。

検索対象、今現在はソファである。

二年前に買った犬用ソファ、ほんとは安物の人用ソファで、あの頃チトーが何でもかんでも壊していたからこれを買ったけど、三歳になり、物を壊さなくなり、この安物が残った。クレイマーは満足して座っているけど、人には座り心地が悪すぎて、もっといいのに買い換えたい。それで一行書いてはソファ、二行書いてはまたソファというぐあいであり、コンピュータの画面に出てくる広告が、ソファだらけになっている。

この検索癖さえなければと思うけれども、餅つきの合いの手みたいな効果を生んで、集中できるときには、却って検索してる方が、進む、進む。進まないときの方が絶対的に多いだけで。


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米国人の夫の看取り、20余年住んだカリフォルニアから熊本に拠点を移したあたしの新たな生活が始まった。

週1回上京し大学で教える日々は多忙を極め、愛用するのはコンビニとサイゼリヤ。自宅には愛犬と植物の鉢植え多数。そこへ猫二匹までもが加わって……。襲い来るのは台風にコロナ。老いゆく体は悲鳴をあげる。一人の暮らしの自由と寂寥、60代もいよいよ半ばの体感を、小気味よく直截に書き記す、これぞ女たちのための〈言葉の道しるべ〉。