(画=一ノ関圭)
詩人の伊藤比呂美さんによる『婦人公論』の連載「猫婆犬婆(ねこばばあ いぬばばあ)」。伊藤さんが熊本で犬3匹(クレイマー、チトー、ニコ)、猫2匹(メイ、テイラー)と暮らす日常を綴ります。今回は「ホットカーペットに溶ける」。この冬、寒さ対策でまず出したのがホットカーペットだったそうで――(画=一ノ関圭)

今、この家の中は植物だらけ(動物だらけなのは前から)。

熊本の冬は温暖だ。でも数年に一度の割合で寒い冬が来る。二〇二一年がそうだった。零下五度まで下がった。そしてうちの植物たちはほとんどが熱帯原産の鉢植えなので、生き延びられないのだった。ところが熊本の夏は、いや春も秋も、かれらの故郷みたいな温度と湿度だから、外でもかまわない。あたしはばんばん外に出す。それでみんな元気を取り戻し、温暖な冬ならそのまま越せる。そのうちに鉢から根が生えちゃったりするのである。

二〇二一年、零下五度の予報を見て、あたしは焦ってホームセンターに行き、簡易温室セットを買ってきて組み立てた。超特大のビニール袋を買ってきて、温室に入らない大鉢や根の生えたやつにすっぽりかぶせた。シェフレラ、ツピダンサス、ウンベラータ、パキラ、カシワバゴム、ポトスにクワズイモにモンステラ。で、みんな枯れたのだった。

温室に入れ忘れたフィロデンドロン・クッカバラは予想通り寒さにやられて、葉という葉が枯れたのだが、春になったらまた出てきた。ところが簡易温室とビニール袋で保護したのは全滅し、一つも蘇ってこなかった。

つまり、風通しである。

室内園芸で一番大切なのは一に風通し、二に風通し、三四が水やりと日当たりで、五に風通し。弱ったら外に出して、風通しのいい明るい日陰に置くだけで元気になる。