自分の足で前に進む意味

以降、マイリーは自立した女性の姿をますます楽曲で寿ぐようになった。次のアルバムでは「私は誰にも属さない あなたに愛される必要はない」と歌い、最新アルバム『エンドレス・サマー・ヴァケーション』の先行シングル曲「フラワーズ」では、「私は自分に花を買うことができる あなたよりも私を愛することができる」と歌った。なんとシンプルで力強い言葉だろう。この曲で、ようやくマイリーにグラミー賞が巡ってきた。彼女は31歳になっていた。なにを言われても、自分を信じて続けていくことの重要性を、まざまざと見せつけられた。

授賞式では自身の名付け親であるカントリーシンガーのドリー・パートンをイメージしたグラマラスなビッグヘアと、鍛え抜いた肉体をキラキラのヴィンテージドレスに包み熱唱した。肉体からも歌唱からも、日頃から類稀なる努力を続けていることがわかる。そのプロ意識とは裏腹に、スピーチは愛嬌にあふれ、生来の親しみやすさを感じさせるものだった。私生活では結婚・離婚も経験したが、それすら糧にし、欲しいものをすべて手に入れた女の輝きを存分に放っていた。

マイリー・サイラス、テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデ。アメリカのティーンが夢中になる女性アーティストは、傷も悲しみもすべて受容し、自分の足で前に進む意味を、楽曲を通して教えてくれる。説教臭さはまるでない。彼女たちの楽曲を愛し育ってきたティーンが、将来どんな大人になるのか楽しみで仕方がない。

 


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年齢を重ねただけで、誰もがしなやかな大人の女になれるわけじゃない。思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。「私の私による私のためのオバさん宣言」「ありもの恨み」……疲れた心にじんわりしみるエッセイ66篇