(イラスト=川原瑞丸)
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は「体調不良」について。40歳を少し過ぎてから体調が優れない状態が日常になったというスーさん。2022年には、ついに「神様から鉄拳をくらわされた」そうでーー。

やると決めたら、体はどこまでもついてきてくれた

年明け早々、インフルエンザA型に罹患した。40年以上ぶり2度目となる。前回はたしか、小学校高学年にあがるかあがらないかのあたりだった。外食のあと、父親が運転する車で帰宅する道中に気持ちが悪くなり、またいつもの車酔いかと思ったが、車から降りた途端、道路に吐いてしまった。

私は子どもの頃から体が強く、熱も出さなければ吐くことも滅多になかった。だから、たいそう驚いたのを覚えている。スクールゾーンを示す黄緑色の道路に、およそ自分の体内から出されたとは思えぬ量の液体を吐瀉し、私の体が大変なことになってしまったと怯えた。それがインフルエンザの仕業だとわかったのは、翌日のことだった。

以来、ほとんど風邪も引かず、大きな病気もせずに生きてこられた。中高あわせた6年間のうち、欠席したのは3日くらい。皆勤賞を狙ったわけではなく、単に健康だった。それが私だった。

健康なうえに無理の利く体で、社会に出てからは夜討ち朝駆けで働いた。無茶なスケジュールも余裕でこなした。やると決めたら、体はどこまでもついてきてくれた。そういうものだと思っていた。