イラスト:川原瑞丸
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。歯に関してここ10年は散々だというスーさん。虫歯の治療をお願いしているかかりつけ医にインプラント治療もお願いしていいものか、不安をぬぐえぬまま流れに乗ってしまった結果ーー。(文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)

インプラント経験者が異口同音に言うこと

ようやく、2つ抱えている口腔内トラブルの1つが片づいた。今回、ほとんど愚痴になってしまうことを先に謝罪します。

アラフォーになり、治療済みの虫歯は再び虫歯になるという騙し討ちに遭うことを知った。就寝時の食いしばりで歯が割れる不測の事態にも見舞われた。歯に関して、ここ10年は散々だ。

そこで、インプラント。顎とはいえ、頭蓋骨に穴を開けてボルトを突っ込み、新しく歯を埋め込む治療である。40歳を超え、経験者がグッと増えた。彼らは異口同音に言う。

「高額だし、失敗すると大変だから、信頼のおける専門医にやってもらうべき」と。

私には、ここ5〜6年お世話になっているかかりつけの歯科医がいた。虫歯の治療に関しては、ほとんど非の打ちどころがない。クリーニングに関してもそうだ。

数年前、左下の歯が使いものにならなくなり抜歯した。そのときインプラントを提案されたが、やはり頭蓋骨に穴を開けるのが怖く、のらりくらりとやり過ごした。口の開きが狭いので、歯抜けは誰にも気づかれなかった。