神様の鉄拳
そうもいかなくなったのが40歳を少し過ぎてから。しかし、奇しくもそこから私の仕事人生が目まぐるしく変化した。無理はしたくないと言いながら、やりたい仕事はどんどん増える。常に眠く、体がカチコチで、体調が優れない状態が私の日常となり、プレ更年期もあるからこんなもんだろうと高を括った。体の神様がいたら、かなり腹を立てていたはずだ。
ついに、神様から鉄拳をくらわされたのが2022年のコロナ罹患。予防策は万全ながら、忙しさに追われて生活を疎かにし、まんまと感染した。ラジオのレギュラーをはじめ仕事を10日ほど休んだら、体は嘘のように楽になった。仕事仲間に体調不良で迷惑をかけたことがほとんどなかったので、いじけた情けない気持ちになった。私はもっと、強いはずなのに。
翌23年にはウイルス性上咽頭炎に罹患。これも多忙を極めていた時期のこと。そして、今年のインフルエンザA型。「疲労」で済んでいたものが、「罹患」とセットになった。おまえが思っているほど強くはないと、体が逐一知らせてくる。私は弱体化している。
今回も、仕事関係者に迷惑をかけてしまった。謝るのは時世の流れに反するが、やはりフリーランスとしては信頼に直結する事案に違いない。繰り返してはならぬ。実は、今回は過去にないほどの疲労を感じた日が何日かあった。しかし、自分を止められなかった。整備不良の車だと知りつつ、爆走を続けるしかない恐怖があった。
いまのところ、無理が祟ったタイミングで神様がなんらかのウイルスを私に投げつけるスタイルで済んでいる。だが、大病のリスクは年々増えていくに違いない。
マズいとは思っているのだ。だから、去年は仕事を減らそうとした。まんまと失敗した。今年も夏までは忙しいと確定している。みんな、どうしているのだろう。子育てやら介護やら、どう両立させているのだ。
50代は過信との闘いになるだろう。80代が聞いたら寝言だろうが、自己拡張から自己縮小へ舵を切らざるをえない予感がビンビンする。生き方を根っこから変え、それでも幸せでいられる方法を真剣に考えなければならない時がきたようだ。仕事、好きなんだけどな。
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年齢を重ねただけで、誰もがしなやかな大人の女になれるわけじゃない。思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。「私の私による私のためのオバさん宣言」「ありもの恨み」……疲れた心にじんわりしみるエッセイ66篇