一人前の手代になった後
しかし、子供が一人前の手代になっても、住み込み生活は変わらなかった。表1は、大坂両替店の奉公人の職階を示したものだ。
子供が手代に昇進したあと、まず初元(はつもと)として3年間くらい勤め、手代の末端として業務の習熟に努めた。そして初元の4年目には、平の手代に昇進した。このあとも、職階の階梯を一段ずつ登っていくことになる。
平を約6年、入店して16年ほど勤続すると、役づきの手代に昇進した。このとき26歳前後だ。さらに勤務を続け、勤続23年目、33歳前後には、住み込みの最上位として店を統括する支配に昇進した。そして勤続30年目、40歳前後に至ると、別宅手代に昇進した。
別宅手代になると、店外の自宅から重役として店に通勤するようになり、経営の監督や意思決定を担当した。彼らは、この時点ではじめて妻を迎え、家族を持つことができた。ようやく住み込みから脱したわけだ。
なお、職階については、京都呉服店に比べて大坂両替店のほうが簡素化されていたが、両方とも別宅手代になる勤続年数と年齢はほぼ同じであった。