愛犬を看取って感じた自分たちの老い

おかげさまで夫も私も、今のところ健康にとくに問題はありません。夫は海外生活も経験しており、自立した男性なので、料理も苦にならない。私が舞台などで東京に行っている間は、一人で楽しく過ごしています。

いい意味でええかっこしいの夫は、今でも外出する時は淡いピンクやイエローの明るい色の服を選んでお洒落をし、ピシッと背筋を伸ばします。髪の毛も、定期的にカラーリングしている。最後まで自分の歯でおいしいものを食べたいからと、口腔ケアも丁寧にしています。たぶん、今でもほとんど全部自前の歯だと思います。

ただ夫は一時期、ゴルフ中にめまいがするというので、心配になって検査を受けたことがあります。調べた結果、脳や心臓にはまったく問題がありませんでした。原因は目。乱視、近視、老眼、白内障などいくつかの症状があり、度が合わないメガネをかけて身体を動かしていたので、クラッとしたんですね。白内障の手術を受けた際、人工水晶体に度を入れたことで、解決しました。

できればこの先、認知症にはなりたくないという気持ちはあります。ですから2人で古い洋画を見ながら、登場する役者の名前をかたっぱしから言い合っているの。「まだ、大丈夫だね」などと、笑っています。

ただ、こんな出来事があって──。私たちはブルドッグが好きで、3代続けてブルドッグを飼ってきました。数年前のある暑い日、ちょっとした隙をついて、3代目のうめ吉が家の外に出てしまったのです。ブルドッグはもともと心臓が弱く、暑さに弱い犬種。夫が気付いたときには、かわいそうに、うめ吉は熱中症で亡くなっていました。

私が仕事から帰ってくると、うめ吉は玄関の内側に横たわっていました。夫は暑いなか、やっとのことで外からうめ吉を運び込んだものの、一人では2階のリビングルームまで運べなかったんです。「いやぁ、オレまで死んじゃうかと思ったよ」とのこと。そこで2人でうめ吉を抱いて階段を上ろうとしたのですが、重すぎて階段を上がれない。なにせ体重が40キロ近くありますから。結局、近くに住んでいる劇団員の若い子にSOSを出して、手伝ってもらいました。

その時初めて、自分たちはもう若くはないんだと実感しました。今、新しい犬を迎えても、私たちの体力では病気になったとき介護も大変だし、飼いきれないかもしれない。そう思い、残念ながら今はブルちゃん不在の状態です。

そんなこともあってか、最近夫は、自動車の免許を返納すると言い出しました。運転が大好きですが、万が一、事故でも起こしたら、多くの人に大変な迷惑をかけてしまう、と。伊豆の家は山のてっぺんにあるので、車がないと移動が大変ですが、これからはタクシーを利用しようと話しています。