夫の生前葬で「霊柩車呼びましょうか?」

2019年の3月には、夫の生前葬と銘打ってパーティをやりました。夫の後輩である高平哲郎さんや、WAHAHA本舗を主宰している喰始(たべはじめ)さんなど、笑いの世界で活躍している方たちが、夫の80歳の誕生日を祝おうと発案してくれて。

でも夫は照れ屋なので自分が主役になるパーティは苦手。だから、私が「生前葬という形なら、みんな集まりやすいんじゃない?」と提案しました。夫も、「それならいい」ということになって。

夫はテレビの黎明期から構成作家をつとめ、『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』や『シャボン玉ホリデー』などの番組にかかわってきました。コントを得意としていて、喜劇が大好き。だからこの生前葬も、ひとつの洒落よね。

ところが招待状を送ろうと思って住所録を見ながら、「この人は?」と聞くと、「亡くなった」。「じゃあ、この人は?」「施設」……。まるで、ちょっとブラックなコントの台本みたいな会話です。70代後半あたりから、まわりで亡くなる方がぐっと増えていくんですね。生きていらしても、外出が困難な方がいます。ああ、そういう年齢なんだなと、改めて実感しました。

それでもパーティ当日は70名くらい集まって、賑やかにワイワイ。「もうこれで、いつ逝ってもいいですね」「なんなら、霊柩車呼びましょうか?」なんて言葉が飛び交い、みんなで大笑い。「老い」も洒落にして、笑いに変えてしまう。すると、寂しくなくなります。

誕生パーティだったら足を運ばなかっただろう方も、生前葬となったら駆けつけてくれる。しばらく会っていなかった方にも会えたし、本当にいい会でした。パーティがお開きになる時、夫は、同年代の方たちとは「もうこの世で会えないかもしれない」という思いがあったんでしょうね。「またね」という挨拶はできなかったと、後から言っていました。

生前葬も、免許の返納も、新たな友だちを作ることも、私たち夫婦にとっては「この先もちゃんと生きるため」の終活です。2人で「骨は海に撒こうか」なんて話をしていると、ちょっと切なくなって涙が出ることもありますが、次の瞬間はケロッとしている。

生きている限り、好奇心を全開にし、たくさん笑い、たくさんしゃべって過ごしたいですね。