もう一度結婚するなんて、冗談じゃない
いまから10年以上前、私は49歳で再婚しました。当時、私には23歳の娘と22歳の息子がいましたが、正直、まさか自分が再婚するなんて、想像もしていなかったのです。
43歳で離婚したとき、「あぁ、自由になった」と思いました。だから、二度と結婚するつもりはなかったのです。離婚にはものすごく負のエネルギーを使いましたし、姓が変わることによる膨大な手続きが面倒で、もう、こりごり。結婚さえしなければ、離婚する心配もありません。だから、もう一度結婚するなんて冗談じゃない、と思っていました。
それが、離婚してから2年くらいたった頃、大阪でCM制作やインターネット番組の企画をやっている人が、私に仕事の依頼をするため、松山にやってきました。それが後に夫となった加根兼光(けんこう)さんです。第一印象は、「いかにも“業界人”という感じやなぁ」。(笑)
企画内容は、作家の中島らもさんとの対談。私は中島らもさんに興味があったので、すぐにお引き受けしました。ところがそれから間もなく、らもさんがお亡くなりになり、その番組は幻となってしまったのです。後からわかったことですが、加根さんは私が選者を務めていた俳句のサイトに、「兼光」という俳号でよく投句していた方。熱心に投句してくるし、レベルが高かったので、名前は覚えていたのです。
それからしばらくして、私は仕事で三重に行くことがありました。台風が近づいているなか、翌日は松山での生放送が控えていたので、仕事を終えると早めに移動を開始。ところが、大阪までは戻れたものの、その先の四国に渡るすべての交通手段が止まっていたのです。強風のため橋も閉鎖されている。どうしたらいいのか、途方に暮れてしまいました。
まったくの偶然ですが、兼光さんはその日、別の仕事の件で、大阪から松山の私の事務所に電話をしていたのです。そのときに、私が大阪で立ち往生していることを知って──。宿の手配などを、急遽彼がサポートしてくれました。
結局、台風のために翌日の生放送に出る必要もなくなりました。宿泊先も確保できたし、急に心が楽になり、その晩、一緒に飲もうということになって。飲みながら、「えぇ人やなぁ、ありがたいなぁ」と思いましたが、そのときはそれ以上の感情があったわけではありませんでした。