いつもほがらかな藤田弓子さん 撮影:宮崎貢司
夫・河野洋さんと静岡県の伊豆で暮らす女優の藤田弓子さん。葬儀やお墓のことなど、夫婦間でなかなか話しにくいもの。しかし、藤田さんは、笑いや冗談を交えながら、死後のことを話し合っているそうです。夫妻は、終活を意識してどのようなことをしているのでしょうか。(構成=篠藤ゆり 撮影=宮崎貢司)

モノを捨てるよりも友だちを増やしたい

私も、夫の河野洋(構成作家)も、2人ともそれなりの年齢ですが、モノを断ったり捨てたりするような終活らしい終活は、とくにしていません。

まわりを見ていると、終活のために持ち物を減らす人が多いみたいです。たぶん「遺される人に迷惑をかけたくない」という思いがあるんでしょうね。でも私はあまり、モノを捨てる気になりません。好きなものに囲まれて死ぬのは悪くないと思いますし、持ち物を減らすなら、体力のある60代から始めなきゃ間に合いません。

とはいえ、最近は少しずつ、大切にしてきたものを大事な人に差し上げたりはしています。たとえば着物。

私の母は72歳のとき、心臓の病気であっという間に亡くなりました。お洒落な人だったので、何十足と靴が残されていたし、洋服も大量にあって。私一人で、膨大な遺品の整理をしました。

着物もたくさんありましたが、私に着せたくて買ったものばかりですので、すべて受け継ぎました。でも最近は着る機会も少ないので、皆さんにもらっていただいています。

モノを減らす作業はせいぜいそのくらい。それほど積極的に進めているわけではありません。それよりむしろ、「増やす」ことを考えています。

増やすと言っても、モノを増やすわけではありません。素敵な友人を増やしたいと思っているの。私はいまだに、新しい友人を作り続けています。というか、自然に友人ができていくんです。

私たち夫婦は30年近く前から静岡県の伊豆に居を構えていますが、東京にも仕事用の小さなマンションがあります。当然、そこから出かける時間はその時々で違う。それなのに近所を歩いていると、必ずといっていいほど、フレンチブルドッグの散歩をさせている方にお会いします。なんでも、その方も散歩の時間はまちまちだそうで、それでもお会いするのは、もうご縁としか言いようがありません。

フレンチブルがすごくかわいいので、しゃがみこんで撫でたりしているうちに、いろいろお話しするようになって。そこからおつきあいが始まり、私の舞台を見にきてくださるようになりました。

しょっちゅう行っている大好きな五反田の居酒屋で、必ず顔を合わせるスーパーエリートの20代の男性もいます。素晴らしく話が面白いので、この方とも親しくなりました。舞台で共演した若い男の子たちも、伊豆の我が家に泊まりがけで遊びに来てくれたり。友だちになる人は、年齢や仕事に関係ありません。