その後、『婦人生活』を刊行していた雑誌社がパッチワークキルトを記事として取り上げ始め、私が作った作品も何点か撮影用に貸し出すようになりました。
そうこうするうち、「原宿に教室を作るので講師をしませんか?」と編集部からお声をかけていただき、生徒さんを教えるように。講師は私を含めて数人いましたが、まだまだキルトに関する情報が少ない時代でしたから、皆で集まっては勉強会を開いていました。
講師の仕事は4~5年続いたでしょうか。その教室が解散になった35歳の時に、東京・国立にキルトの教室と材料を売るお店を開きました。以来、現在に至るまで、変わらずキルトに関わり続けています。
32年前、三浦百惠さんが布を買いにきた
キルト制作に向いているのは、のんびりした性格の“待てる”人です。「子どもの頃から家庭科が苦手で」という人でも、ものすごく上手に仕上げたりします。反対に、手先が器用で配色のセンスがあっても、すぐに結果が見たいタイプの方には難しいかもしれません。
器用・不器用にかかわらず、キルト制作には「最後までしっかり仕上げよう」という気持ちが何より大切なのです。
実は、キルトを一番早く仕上げるのは、毎日1時間ずつ作業する人だと言われています。「今日はたくさん縫ったけれど、明日、明後日はやらない」という人より、少ない時間でも毎日コツコツ進める人のほうが絶対に早い。
壁に飾る大きなタペストリーも、1日のノルマを決めて縫い進めていけば、間違いなく1年で完成します。365等分すれば1つ1つはごく小さい面積なのです。
なので、キルトに初めて挑戦する際は、2~3日または1週間程度でできあがる小さなものから作り始め、最後まで仕上げる喜びを味わっていただきたいと思います。達成感や「楽しかった!」という気持ちはモチベーションになりますから。
そういう意味で、私の教室の生徒の一人である三浦百惠さんは、キルト作りに向いている方だといえるでしょう。物静かでおっとりしていて、何ヵ月かかっても仕上げる強い心を持っていらっしゃる。
しかも始められたのが芸能界を引退した数年後という、まだまだマスコミに追いかけられている時期でしたから、家の中で打ち込む趣味としてもちょうどよかったのかもしれません。