キルト作りには性格が出ると言われます。「目立ちたい」「格好良く見せたい」という気持ちが前面に出てしまう人も少なくないなか、三浦さんの作るキルトは、これ見よがしなところが一切なく、とても優しい。それでいて時々ハッとするほど個性的な配色を見せるところは、さすが華やかな世界で生きてこられた方だと思います。
出会ってから32年の月日が流れましたが、三浦さんは現在も変わらず教室に通ってくださっています。私は三浦さんより14歳も年上ですけれど、キルト以外の部分では、彼女から学ぶことのほうが多いくらい。「自分自身でしっかり考えて生きてこられた方なんだなあ」と、いつも感じています。
うちの教室には、心配りのできる良い方ばかりきてくださっているのですが、なかでも三浦さんは自慢の生徒さんですね。
夫も、定年退職してからキルトを始めた
現在、私が直接指導している生徒さんは250人。最近多いのは、定年退職を機に始めた60代の方ですね。最年長は85歳。実は私の夫も、定年退職してからキルトを始めました。最初は私が教えていたのですが、あまりに質問が多いので「初級クラスに入って、基礎から勉強して!」と(笑)。
彼はそれから7~8年かけて、最終的に私が担当するインストラクターコースまで上がってきました。身内の私が言うのもなんですが、夫は結構面白いキルトをたくさん作ったんですよ。
夫は肺がんで10年間闘病し、70歳で亡くなりましたので、私のクラスには1年ほどしかいられませんでした。夫が亡くなっても、こうして打ち込める仕事があって忙しくしていられるのは幸いだなあと思うものの、土日や長いお休みの時はつらいですね。まさかこんなに早く一人になるとは思いませんでしたから……。
母が亡くなった時も「やっぱり人って死ぬんだ。どうせ死んでしまうのになぜ生きるんだろう?」と思ったものですが、ある人が「人はその人自身になるために生きる」と言っているのを聞き、なるほど、と。私はキルトを通して「鷲沢玲子」という人間を生きればいいんだ、と気づいたのです。
キルトは一人でもできますが、仲間と交流し、ワイワイおしゃべりをしながら作れるのがいいところ。これからも教室の生徒さんたちと楽しく語らいながら、たくさんの作品を生み出していきたいと思っています。