撮影:木村直軌
1989年にダウンタウンの浜田雅功さんと結婚し、2人の子どもに恵まれてからというもの、全力で子育て、家事に打ち込んできた小川菜摘さん。50代に入ってから、妻、母としての立場に変化があったようで──(構成=上田恵子 撮影=木村直軌)

そろそろいいかなと復帰を決めた時

2019年の10月で、結婚30周年を迎えます。あらためて口にすると長い年月ですが、実感としてはあっという間でしたね。結婚とほぼ同時期に、夫が大阪から東京へ進出したため、その後は意識して仕事をセーブしてきました。東京で一から仕事を始める夫をサポートしたかったし、ほどなく2人の子どもに恵まれたこともあり、まずは家のことを最優先したいと思ったからです。

なかでも舞台の仕事は、26年間、完全にお休みしていました。私はもともと文学座の研究生出身なので、舞台には特別な思いがありましたが、稽古だけで1ヵ月近くかかりますし、地方公演もあるなど、拘束時間が長いですからね。そろそろいいかなと復帰を決めたのは50歳の時でした。

きっかけを下さったのは、俳優の渡辺いっけいさん。いっけいさんとは、昼ドラでご一緒していたのですが、ある日「菜摘ちゃんは舞台やらないの?」と聞かれて、ハッと気づいたんです。言われてみれば、もう子どもたちも手を離れたし、今ならできるかも。そこで「やりたいです!」とお返事しました。

夫には、声をかけられたその日のうちに相談しましたよ。そうしたら「もう、やっていいんちゃうの? 子どもも大きいし」という返事が。息子たちも背中を押してくれたんです。おかげで心置きなく26年ぶりで舞台に復帰することができました。

それから6年、毎年数本の舞台に立っています。2018年は、東京・明治座で行われた「梅沢富美男劇団特別公演」で、梅沢さんと日舞を踊らせていただきました。もちろん私には日舞の経験なんてありません。半年前から必死でお稽古ですよ。

いい歳なので覚えも悪いし、本当に大変でしたが、50歳を過ぎて新しいことに挑戦できて、しかもそれが自分の身になるなんて最高に幸せなこと。人間、何歳になっても成長できるものだなとしみじみ思いました。