ただ、私の父がサックス奏者で、長男が小さい頃にピアノやサックスを教えてくれていたんですね。なので、長男がミュージシャンになったのは、父の影響もあるかもしれません。夫も「音楽好きは、俺らやなく、じいちゃんの血やな!」と言っています。おかげさまで長男は、ベーシストとして評価していただいているようですが、私たちにはまったくわからない分野なので……。もう本人の努力の結果です。
そもそも親がお膳立てして、「うちの子をお願いします」というのはやっちゃいけないこと。どうしたって親は先に死ぬ。自分の力で自立できるようになってもらわないとね。手を出したために、独り立ちできないのは、一番不幸なことだと思っています。
かけがえのない親友とともに泣いて
出演する舞台には、夫も息子たちも毎回足を運んでくれています。復帰して最初の舞台が終わった時は、それぞれからメールをもらいました。
夫からは「おまえはこれがやりたかったんやな」。息子たちからは「母さん、舞台やりたかったんだね。これからはどんどんやったほうがいいよ」。彼らが私の舞台を観たのは、その時が初めてです。3人にまったく同じことを言われて、「これまで私が頑張ってきたことをわかってくれたのかな」と嬉しくなりました。
最近は仕事で家を空けることも増えましたが、留守中の家のことはわが家の男たちがなんとかやってくれているみたい(笑)。とはいえ、自分で言うのもなんですけど、彼らが全面協力してくれるのは、これまでちゃんと家族と向き合ってきたからだと思うんです。PTAの役員をやり、夫ともども学校のすべての行事に出席してと、もう全力で子育てしてきましたから。
もちろん家庭を優先したことで、若い時にしかできない役を逃したこともあるでしょうが、私の場合、舞台をやりながら子育てをしていたら、たぶん両方とも中途半端になっていたと思うんです。だから、ちゃんと一つに絞ってよかったなあと。
次男が4歳になる頃から付き合っているママ友とは、ずっと子育てや家族についての悩みを相談し合ってきました。今ではかけがえのない親友。その彼女が、私の舞台を見て、泣いてくれるんです。「一緒に乗り越えてきた子育ての悩みが、走馬灯のように蘇ってきちゃった。やりたい舞台に立てて本当によかった」って。
彼女も同じ頃に、念願の自分のお店を持ったんですよ。店内で働く彼女を見て私も泣けたんだから、同じですね。そういう存在も、この26年があったからこそだと思います。