「さっき同級生から電話があったの。黒川くんが逃げているらしいって。気をつけろよって」
「なに? 気をつけるって」
「知り合いのところに逃げ込むかもしれないってことだよ。あるいは、警察が事情聴取に来るとかさ。そういうこと」
 そうか。
 逃亡中の犯人が匿(かくま)ってくれ、なんていうのはドラマでもよくある話。
「え、でもさよりちゃん、いくら幼馴染みでも全然会ってないんでしょ?」
「会ってないけどね。いちばんの仲良しだったのは、同級生たちは皆知ってることだしね」
「あたしが警察でも、そういうところに逃げ込んだり頼ったりするかもしれないって思うわね。迷惑な話だけど、しょうがないね」
 しょうがないのか。
 いや、それより。
 夏夫くん。お父さんが、殺された。
「私に電話とかなかった?」
「ないわ。夏夫くんね。大変よね今頃。どうしているんだろう」
「電話してみる」
 もう上がったかな。でも、筧さんなら全部わかってるはず。
「やめておきなさい。向こうもなんだかんだでバタバタしてるかもしれないんだし」
 なみえちゃんが言うけど、でも。
「心配だもん」
 知らないってことはないよね。どうだろう。あ、〈カラオケdondon〉の厨房にはテレビがある。いつも点いてる。チラッと見えたことがある。