「夏夫くんと、お母さんの志織さん。坂城家にしばらくいることになったんだ」
「坂城家? 悟くんの家ってこと?」
悟くんが、話してくれた。
実は偶然由希美ちゃんがその現場、長坂さんが撃たれたっていうレストランがあるビルの上にいたって。びっくり。とんでもない偶然。
そして、悟くんのバイト先の店長さんが、長坂さんに頼まれていたっていうの。だから、悟くんが店長さんと一緒にここに来た。由希美ちゃんも三四郎に話して心配してここまで来た。
そしてお母さんのところに、夏夫くんの家まで行って、悟くんが言ったんだ。
ひとまず、坂城家に来ればいいって。
坂城家は長坂さんには一切、何の関係もないから身を潜めるにはちょうどいいって。そして店長さんも隣の家にいるから、この先のことを相談するのにもいいからって。
なるほど。
「何もかも内緒の話だよって筧さんが言ってたけど、そのことね」
「そう」
皆が頷いた。
「俺は別として、由希美ちゃんも三四郎も、誰にも言わないし話題にもしない。みちかちゃんもね」
わかった。そういうことなら、そりゃそうだと思う。
「でも、身を潜めるって、どれぐらい」
「わかんないけどな」
夏夫くんが言う。
「とりあえず、犯人が誰かわかって捕まって、そして暴力団同士の抗争がそれ以上もう続かないってことがわかるまで、かな」
「そう」
それ。
「あのね、夏夫くん。言っておかなきゃならないことがあるんだ。そしてこれも内緒の話かも」
「なに」
「私のお母さん、ほら夏夫くんのお母さんの志織さんと同じ高校で先輩で」
「うん」
「それで、幼馴染みが暴力団にいるって言ってたって話は、したよね?」
したね、って皆が頷いた。
「その人が、犯人かもしれない。長坂さんを、撃った人」
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昭和52年。周平と花の駐在夫婦が暮らす雉子宮は、やはり事件の種が尽きず……。倒れた村長、幽霊騒ぎ、そして埋蔵金まで!? 連作短篇シリーズ第3弾。