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 バイトしている間も気になってしょうがなかった。でも、うちの店にはテレビもラジオもないから何もわからなくて。
 バイトが終わって着替えてすぐに店にある電話ボックスに駆け込んで家に電話した。なみえちゃんに確認したけれど、ニュースは何もないって。まだ犯人の名前も出てこないし、逃亡中じゃないかってことだけ。
 でも、撃った人間が逃亡中ってことは、警察はもうそれが誰かはわかっているはずだって。確かにそうだなって。
 黒川優馬さんじゃなきゃいいなって思うけど。
 関係はないんだけど、もしも黒川さんだったら、私の母親の幼馴染みが夏夫くんのお父さんの夫を殺したってことが確定してしまって。
 うん、気まずいというか、全然関係ないんだけど、微妙だ。
「こんばんは」
〈カラオケdondon〉に駆け込んだら、筧さんがカウンターにいて、微笑(ほほえ)んで頷いた。
「いらっしゃい。夏夫ももう部屋にいるよ。他の皆もいる」
「そうですか。ありがとうございます」
「あぁ、みちかちゃん」
 筧さんが、急いで行こうとした私を呼び止めた。
「はい」
「話は皆から聞けるけれどね。そこで聞いた話は、全部内緒だ。他の誰にも、みちかちゃんの親にも全部内緒の話だ。誰にも教えちゃ、ダメだよ」
 どういうことかわからないけど、筧さんの顔が真剣だった。
「わかりました」
 ってことは、なんのことかわからないけど、筧さんも誰にも言ってないってことだ。
 七号室の扉を開けたら、皆がいた。
 夏夫くんも三四郎も由希美ちゃんも悟くんも。
「お疲れ」
「お疲れ様。皆早かったんだね」
 急いで座った。由希美ちゃんの隣。
「それで」
「待ってた。たまたまなんだけど、みちかが最後だったんだ」
「なんの最後?」
「話を全部知るのが最後」
「どういう話」
 夏夫くんのお父さんのことだろうけど。