自分らしい「逝き方」

私はこれまで、訪問診療をおこなう在宅医として1000人を超える患者さんを看取ってきました。そんな私の考える幸せな最期のあり方とは「生き方も“逝き方”も自分らしく」ということです。幸せな最期は、自分らしい“生き抜き方”を選んでこそ、実現します。

2018年に亡くなった俳優の樹木希林さんは「死ぬときぐらい好きにさせてよ」という言葉を残しました。まさにこの言葉のとおりだなと在宅医療の現場で実感する毎日です。

『死に方のダンドリ 将来、すんなり逝くための8つの準備』(著:冨島佑允・奥真也・坂本綾子・岡信太郎・太田垣章子・霜田里絵・中村明澄・大津秀一/ポプラ社)

では、どうすれば人生の最期を幸せに、自分らしく過ごせるのでしょうか。私は、次の3つを考えることが自分らしい“逝き方”の実現につながると考えています。

(1)過ごす場所(自宅か、病院か、施設か)
(2)やってもらいたいこと(受けたい医療や介護)
(3)やりたいこと(かなえたい夢)

まず(1)過ごす場所(自宅か、病院か、施設か)についてです。

どこで過ごすのが適切かは、患者さんの病気や症状、家庭の環境などによって違います。最期を迎えるのは病院がいい、と一概に言うこともできません。

「本当は家で過ごしたい」と願っている人が望めば家に帰れるということを知らないままに病院で亡くなってしまうのを私はしばしば目にしてきました。自分の希望がかなわないというのはとても残念ですし、悲しいこと。悔いの残ることだと思います。

自分の気持ちとその他の条件を考え合わせて、納得のいく場所を自分で選んでほしいと願っています。