劇場を出ると、みんな苦笑い
日曜日の昼下がり、10名のメンバーは小劇場に集まった。舞台と客席は手を伸ばせば届く至近距離。最前列に陣取った私たちはワクワクして開演を待った。が、始まって間もなく、「ん?」。こ、これは、かなり下手……。
熱演されればされるほど、目のやり場に困る。かといってうつむいていたらMさんから丸見えだ。必死の思いで直視する90分だった。終演後にお花を渡せば、やり切った感にあふれたMさん。劇場を一歩出ると、みんな苦笑いを浮かべて三々五々、駅を目指した。
それから1ヵ月もしないうちに、再びMさんから「舞台が決まりました! チケット代は……」とLINE。「また?」。私はスマホ片手に固まった。
ほかのメンバーも同じだったようで、既読はつくが返事はない。やがてぽつぽつと「行けたら行くね」。前回とのあからさまな温度差に気の毒になってくる。考えあぐねた末、私は「行きます」と返信した。
当日、会場に来たのはマダムKと私だけ。「行けたら行く」の数名は全員ドタキャンだった。舞台の出来ばえはといえば、期待もむなしく初回同様、90分あまりの苦行。Mさんが袖に引っこむのを見届けて、マダムKと私は無言で劇場を後にする。
しばらくして、Mさんから3回目の連絡があった。「舞台やります!」。もう誰からも返信がない。そのLINEからすぐ、マダムKから私に連絡が入った。