クレーム主らはさぞかし気まずかろう

喫茶店の隅にいたマダムKが私を見つけて手を上げる。消沈している様子に驚いて話を促すと、マダムKに、メンバーからMさんについてのクレームが入るのだそうだ。「チケットノルマのカモにされるのか」と。

さらにマダムKは、「これ見ちゃったの」とスマホを見せる。メンバーのSNSに「2度と行かない」「金返せ」などの罵詈雑言が並んでいた。

ふつふつと怒りが湧いてきた。Mさんへの不満をなぜマダムKに言うのか。「会長だから、私に伝えてほしいそうなの」

かつてファンクラブの会長だと言っていたのはあくまでも雑談の域。なのに、こういうときだけ都合よく使うなんて。「若い子が夢に一途なのっていいじゃない?私はそういう生き方をしてこなかったから、Mちゃんみたいな子、応援したいのよ」

正直に言えば、微塵も理解できなかった。でも、矛先違いのクレームをつける連中よりは、マダムKのほうが人として好きだ。それ以降、MさんからのLINEはぱったり途絶えた。うまく伝えたのだろう。

しばらくして、グループの食事会が催された。私はマダムKに頼み込まれて出席。Mさんの出欠は未定だが、マダムKひとりでは行きづらいと言う。

居酒屋のテーブルにいつものメンバー。と、そこへ、Mさんがひょっこり顔を出した。私もギクリとしたが、クレーム主らはさぞかし気まずかろう。と、目をやってみたら……。「Mちゃん。会いたかったよー」「こないだは残念。また見たいよー」