思わず発した言葉で会長補佐と呼ばれ

え──!! これが世に言う《大人の対応》だとしたら空恐ろしい。「2度と行かない」が「また見たい」に換言されるなんて。即興でできるって、もしかしたら演技力はMさんよりこの人たちのほうが上なんじゃないの?

「Mちゃん、売れたらテレビにKさん呼んであげなよ」「初代ファンクラブ会長だもんね」

どっと笑いと拍手が起きる。

私は頭に血が上った。彼女らの言葉や表情の端々に「よくやるよ」という嘲笑が混ざっている。気さくでなごやかな集団が、底意地の悪い小姑集団に見えてきた。マダムKは困ったように微笑んでいる。内心どれだけ動揺していることか。助け船を出したかった。

焦る口から出たのが、「私もいますからね!」。途端に湧き起こる拍手と歓声。ヒューヒュー! 会長補佐、会長補佐!

そういうわけで、私はマダムKとほぼ月イチのペースで観劇という名の修行に出かけている。マダムKは「無理しないで」と気遣いながらも「来てくれて心強いわ」と言う。

マダムKを置き去りにしたら、小姑集団と同類になってしまう。それだけはどうしても嫌だった。Mさんの芝居はいっこうに上手くならない。本人があきらめるか、マダムKが引導を渡すか──。

どちらにしても他力本願。私の苦行は自業自得、ここに極まれりだ。