「杉山君は音楽に行ったほうがいいよ」
ギターは親が買ってくれました。他に何を欲しがるでもない子だったので、ギターくらいなら買ってあげようという感じで。我が家は父親が警察官で、母親は三味線と歌と踊りのお師匠さんという家庭。朝から晩まで、母のお弟子さんの練習する音色が響いているような家でした。勉強勉強と口うるさいタイプの親ではなく、わりと自由にさせてくれる環境だったと思います。
美大を受けようと、YMCAでデッサンの勉強をしていた高3の夏。泊まりがけのスケッチ大会で、清里に行ったことがありました。宿にはギターがあり、夜みんなでお茶を飲みつつ話している時に、僕がそのギターを弾きながら歌ったりしていたのです。
すると帰りの電車で隣に座ったコーチが、「杉山君は音楽に行ったほうがいいよ」と話しかけてきて。そのコーチとはその日が初対面。僕自身、音楽をやりたいと思いつつ、非現実的だよなと自分の気持ちにフタをしてきたので、その言葉に背中を押されたような気がしました。
コーチにフタを開けてもらったことで覚悟が決まり、当時通っていたライブハウスの店長に「ここで働かせてください」と直談判。それを機に、本格的に音楽の道を目指すことになりました。両親は「やりたいことをやりなさい。自活して頑張ってみなさい」という感じで、特に反対というのはなかったです。