2023年、世界選手権で優勝を決め、父の俊一さんと日の丸を掲げてウィニングラン(撮影:粟野仁雄)
レスリング女子53キロ級でパリ五輪代表に内定した藤波朱理選手、20歳。昨年9月にベオグラード(セルビア)で行われたレスリング世界選手権での優勝が、代表選出の決め手となった。長らく負け知らずで、連勝記録は吉田沙保里さんの119を抜き133に(3月21日現在)。パリでは金メダル候補の筆頭格といわれている(取材・構成・撮影:粟野仁雄)

<前編よりつづく

減量には 神経を使って

164センチ。53キロ級のなかでは長身の部類だ。日本人離れした手足の長さに恵まれ、タックルに来られても足を取られることはほとんどない。練習を見に来た登坂絵莉さんは、「攻守ともに完璧。本当に欠点のないレスリングをしています。自分の足を相手に触らせない技術は驚異的です」と話す。

その言葉を藤波選手に伝えると、「相手との距離の取り方は、もしかしたら少しは優れているのかもしれません」と謙遜する。

――父は日体大のコーチに就任し、東京で一緒に暮らしてくれています。三重県にある私の母校(いなべ総合学園高校)の教員と監督も続けているので、東京と往復する生活。母は、父の勤める高校で「寮母さん」として寮生たちのために食事を作っているのですが、4月からは東京に来てくれることになりました。

母とは、何でも話します。父も東京で2人暮らしの間は頑張って料理を作ってくれていましたが、やっぱり母の料理は最高です。母がおかずを実家から送ってくれるのが楽しみで。ダシの利いた薄味でおいしいんですよ。

お寿司が一番好きですけど、嫌いな食べ物はほとんどありません。最近は53キロを維持するため、減量にも神経を使います。筋肉を落とさないようにタンパク質は確保しながら、脂っこい食事や濃い味つけのものはなるべく避けています。