あれは交際中に3人でスノーボードをしにスキー場へ行ったときのこと。「彼はスノボが上手だから二人で教えてもらおう」と話していたのに、ゲレンデへ出ようという段になって、娘が「自信がないから山小屋で待ってる」と言い出しました。

私は「ここまで来たのに?」「みんな予定を調整して来てくれたんだよ」と、うっかり感情的になってしまったのです。ザ・反抗期の娘は負けじと「ママが来たいというからつきあってあげただけだ」と言い放ったきり押し黙ってしまい……。

いつもは楽しい時間を3人で過ごしていたけれど、この日初めて「思春期の子どもと母親の戦い」の現場に彼を直面させてしまったのです。仲がいい姿も本当の姿。でもこのような状況のときもある。家族になるなら一緒に乗り越えなければいけないけど、大丈夫かしら……と少し心配でした。

でも、そのとき傍らで私たちのやりとりを聞いていた彼が、「ママを喜ばせてあげたいと思ってここまでついて来てくれたんだよな。優しいね。ありがとう!」と言って娘の心に寄り添ってくれたのです。「美味しいもんでも食べて帰ろう。何が食べたい?」と彼から訊かれた娘をふと見ると、一筋の涙がツーッとを伝っていて……。彼の優しさが届いたんだなってホッとしました。

今にして思えば、私のなかにあった「いろいろ迷惑かけてすみません」という彼に対するちょっと卑屈な気持ちが、ギクシャクした関係性を生み出していたのでしょう。彼は私と娘をセットで受け止めてくれていたのに、私は物事を複雑に考えすぎて迷走していたのです。

スキー場の一件は娘にとっても印象的な出来事だったようで、ずいぶんと時間が経ってから「あのとき、パパは私の味方もしてくれるしママのこともちゃんと考えてくれてるのがわかったから、信頼できる人だと思ったんだよ」と話してくれました。ピンチはチャンスと言いますが、本当ですね。私にとっては、娘を大切に思う気持ちがいっぱいあっても、思うだけじゃダメなんだと気づくよい機会でした。

そこで私も彼も、娘に対して「あなたが一番に決まってるでしょ」「大好きだよ」と言葉にして伝え、ハグをすることにしたのです。娘は口では「やめてよぉ~」と言いながら満更でもなさそうで。そんなふうにして私たちは少しずつ家族になっていきました。