「五・三・二」で育てる

自分なりのあの当時の指導を振り返り、あえて言葉にすれば、

『努力は天才に勝る!』 (著:井上真吾/講談社現代新書)

「五・三・二」。

で育ててきました。全体を一〇とすると、五は普通に接する。「ボクシングもいいけど、勉強もするんだぞ」「明日のマラソン大会はボクシングの練習でやってきたことを思えばチョロイもんだ。頑張れよ」、そんな日常的な親子の会話が半分を占めます。

つぎの三は「褒める」ことです。とりわけ小さいときはよく褒めました。

「今のジャブは切れていた。ブルース・リーでもかわせないぞ」。

子どもが英雄視している人物を取り上げて褒めました。自分も褒められると嬉しいので、子どもたちも積極的に褒めました。子どもは褒められるとよりノッてくれるし、よしもう一度、と頑張ってくれるものです。

自分は普段の練習でも子育てでも、いいところを見つけたらその場ですぐに褒めます。「ガードがちゃんと上がっている。偉いぞ」「箸の持ち方が上手になった」とその都度褒めるのです。

最後の二は「叱る」ことです。ここがポイントです。ただ単に「何でできないんだ」「昨日できただろ」と声を上げて叱ることはいけません。叱るにはコツがあります。「ダメだ」「やめちまえ」と汚い言葉は使わないことです。

「そんな練習で強くなれるのか」。

「それ、よくないと思わない?」

叱るときこそ、上から押さえつけるのではなく、自分がこう言われたら納得できるな、と一回間を置いて考えてから語りかけます。