「ハートのラブ」で育ててきた
逆に子どもですから調子に乗ることもあります。スパーリング大会でいい成績を残して、いつまでも余韻に浸っていると、「おまえに負けた子は、コンチクショウと思って厳しい練習をしているぞ」と、厳しい競技だからこそ、あえて厳しくあたったときもありました。
長男は二階級王者、次男は世界ランカーです(編集部注:書籍刊行2015年12月当時)。
その実績から私は2014年度に、その年度にもっとも功績のあったトレーナーに送られるエディ・タウンゼント賞をいただきました。この受賞、そして尚弥の二本のベルト、拓真のOPBF東洋太平洋スーパーフライ級王者のベルトは私たちだけの力で獲ったものではありません。親子でお世話になっている大橋ボクシングジムの大橋秀行会長をはじめとする大橋ジムの皆さんの力があってこそのものでした。
そして、ボクシングに専念できる環境を作ってくれた妻・美穂や長女・晴香のおかげです。
エディ賞の由来となった、エディ・タウンゼントさんはガッツ石松さん、赤井英和さん、井岡弘樹さんら数々の名ボクサーを指導された方です。エディさんは優秀なトレーナーであり、人格者でもありました。精神論が根強く残った時代に論理的なトレーニングを取り入れ、選手だけでなくトレーナーも指導されたようです。
「リングの上で叩かれて、ジムに帰って来てまた叩かれるのですか? 私はハートのラブで選手を育てるの」。
自分の指導も同じです。ボクシングのトレーニングに竹刀はいりません。顔はよく強面と言われますが、「ハートのラブ」で二人を育ててきたのです。
※本稿は、『努力は天才に勝る!』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。
『努力は天才に勝る!』(著:井上真吾/講談社現代新書)
優れたコミュニケーターである著者が、いかにして2人の息子をチャンピオンに育て上げたのか、その秘密を余すところなく語る。ボクシングファンだけではなく、ユニークな子育て論、親子関係の参考書として、世の親御さんたちにぜひとも読んで頂きたい1冊