子どもには子どもの人格が

我が息子ですが、他人格です。頭ごなしに叱りつけない。侮辱をするような言い方も避ける。常に聞く耳を持ち、全否定してはいけません。

自分の影響下に置いてマインドコントロールするかのような、そんな指導はしたことがありません。子どもには子どもの人格があります。三人の子には、自分で物事の是非を考え、他人に気をくばることができるように育ててきたつもりです。

ときおり、子どもを自分の所有物のように勘違いしている光景を見かけることがあります。キッズボクシングの会場で、試合に負けたお子さんを怒鳴り、ひどいときには怒りに我を忘れ、息子を殴るお父さんが稀にいます。

ボクシンググローブを付ける1歳の拓真さん(1997年2月撮影)

そのお子さんが慢心したり、手を抜いて負けたのならまだわかります。その家庭の指導法ですからそれは尊重します。でも私はそんな指導は指導者として失格だと断言します。

もし自分がその家の子どもであれば、そんなギスギスとした中でやりたいとは思えないし、やり遂げられないと思うのです。

やるだけやって相手の方が一枚上手であれば仕方がない。相手もこの日のために最善の練習をしてくるに決まっているのですから。対策も練る。勝負だから「勝ち」もあれば「負け」もある。最善を尽くして、でも負けることは勝負の世界ではときにあることです。そのときは負けても慰める。実際に負けたときにも、

「よくやった。尚は力を出し切った。つぎに頑張ればいい」。

と慰めました。翌日からその敗北を糧にして練習すればいいのです。