「そのうち、いろいろなことがわかってくるだろうよ。例えば、谷津のこととか……」
「谷津ですか……」
「ああ。もしかしたら谷津も原磯とつながっているかもしれねえ」
 日村は驚いた。
「えっ。原磯と……」
「もしやつが、宗教法人ブローカーや苦情を言っている住人なんかと関わりがあるとしたら、警察と関わりを持っていたとしても不思議はねえ」
 いや、そうだろうか……。
 日村はしばらく考えなければならなかった。阿岐本が言ったことは充分に考えられる。しかし、それを各方面にわからせるためには実証が必要なのだ。
 阿岐本にもそれはわかっているはずだ。
 日村は言った。
「もし、谷津と原磯がつながっていたとしたら、谷津の目的は何でしょう?」
「暴力団が邪魔なんだろう。不動産について考えてみろよ。暴力団が関係している物件は買い叩かれる。へたをすると暴対法があるので売れなくなる。宗教法人の売り買いも似たようなものだろう」
「たしかに、原磯としては駒吉神社も西量寺もきれいにしておきたいでしょうね」
「駒吉神社は神農系の多嘉原会長とつながりがあったが、最近それがなくなった。きれいになったわけだ。だが、西量寺には俺たちが出入りしているし、町内会の役員さんたちと一度やり合っている」
「なるほど……。警察の手を借りて、自分らを追い出し、西量寺をきれいにしたいわけですね」
「とはいえ、それも憶測だ。朗報を待とうぜ」
 阿岐本がそう言ったとき、車が事務所の前に到着した。時刻は午後四時になろうとしていた。