事務所に戻ると、阿岐本は奥の部屋に引っ込み、日村はいつものソファに座った。
 健一を呼ぶと、飛んできた。
「狭い事務所の中で、何をそんなに急いでいるんだ?」
 日村が言うと健一はこたえた。
「え? いつもと変わらないつもりですが……」
 阿岐本の手伝いができるのではないかと、期待しているのだ。その期待にこたえることにした。
「俺たちが通っている目黒区伊勢元町の町内に原磯というやつがいる。不動産屋だ」
「原磯ですね」
「住民が寺の鐘の音がうるさいと苦情を言ってることは話したな」
「はい」
「苦情を言っている住民たちと、原磯が何か関係がないか調べろ」
「不動産屋と苦情の関係ですね。了解しました」
「宗教法人を売り買いするブローカーがいるらしい。そういうやつらと原磯が関係してないか……。それも調べろ」
「はい。宗教法人ブローカーとの関わりですね」
「中目黒署のマル暴に谷津というやつがいる。そいつと原磯の関係も調べるんだ」
「すべて了解です」
「現地には二人で行け」