それから日村はテツに声をかけた。「今の話は聞いていたか?」
テツは無言でうなずく。
「おまえは、現地には行かずに、ネットで何かわからないか調べろ」
また無言のままうなずく。
普通ならぶん殴りたくなる態度だが、不思議とテツを殴りたいとは思わない。
健一が言った。
「じゃあ、自分は真吉と行ってきます」
さっそく出かけるつもりだ。
日曜だろうが何だろうが、言われたらすぐにやる。健一もヤクザらしくなってきた。
テツもすでにネットであれこれ調べはじめている。
日村はソファに座ったまま、考えていた。
梵鐘の話が、宗教法人ブローカーという妙なところに飛び火した感じだ。オヤジはこの先、何がやりたいのだろう。いや、何ができるのだろう。
日村にはわからなかった。わからないが、オヤジについて行くしかない。それはいつものことだが、やはり覚悟がいることだった。