覚悟か……。日村は思った。こっちが腹をくくれば、向こうも覚悟を決める。だんだんと意地の張り合いのようになってきた。
「わかりました。折り返し連絡します」
日村は電話を切ると、すぐに奥の部屋に向かった。ノックをすると「入(へ)えんな」という阿岐本の声がする。
「失礼します」
「どうした?」
「田代住職から電話がありまして……」
日村はその内容を伝えた。
阿岐本は言った。
「すぐに西量寺に行こう。稔に車の用意をさせな」
「我々が顔を出すと、こじれるんじゃないでしょうか」
「そんなことを言っている場合じゃねえんだよ。田代さんにこれ以上迷惑をかけられねえ」
「我々が行くと、かえって迷惑をかけることになるんじゃないですか?」
「あくまでも泥をかぶるのは俺たちじゃなきゃならねえ。行くぞ」
日村は、すぐに稔に車を出すように言った。
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