義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。
16
翌日は月曜日だ。日村たちの稼業に曜日など関係ないが、やはり月曜日というのは何かが始まるという気分になる。
そんなことを考えていると、電話が振動した。午前十時頃のことだ。西量寺の田代住職からだ。
日村は電話に出た。
「住職、どうしました?」
「あ、日村さん。実は町内会の役員たちがやってきまして……」
声をひそめている。誰かが近くにいるようだ。
「町内会長の藤堂さんたちですか?」
「ええ。住民の代表の方もいっしょで……」
「用件は?」
「暴力団員を出入りさせるな、と……。いや、私は突っぱねるつもりですがね。直接交渉に来たということは、向こうにもそれなりの覚悟があるんじゃないかと思いまして……」